ごきげん座敷牢

主に雑記帳

「んじゃめな本舗」さんの同人誌『ローレライ6 風雲マダガスカル』を読んだ感想を書く

コミックマーケット90で入手した同人誌の感想を書きますよ。

今回紹介するのはサークル「んじゃめな本舗」さんの新刊
ローレライ6 風雲マダガスカル
になります。

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同人委託ショップのWeb通販は以下の通り。皆買おう。

以下の本文はあらすじやネタバレを多少なりとも含むので、
ゼロベースから純粋に楽しみたい方は作品を読破してからの方が良いかもしれません。あしからず。

艦隊これくしょん×架空戦記小説としての「ローレライ」シリーズ

 この「ローレライ」シリーズのコンセプトは大人気DMMゲーム「艦隊これくしょん」に登場する眼鏡っ娘達と80年代から勃興した「架空戦記小説」ジャンルの作品群とのコラボレーション。

「艦これ」のゲームをプレイヤーとして実際やっていると、これがかなり難易度高めで。何度となく「もっと、こう、無茶苦茶に強い艦娘とか登場して楽々突破できねぇもんかね…」などと現実逃避をしてしまう皆の望みを叶える同人誌とも言えます(個人的な感想)

あらすじとしては、難関海域の攻略に手を焼いている鎮守府の面々(霧島、鳥海、望月)の元に、運営を名乗る謎の天の声(エラー娘)から
架空戦記小説作品からのオーバーキル要員が登場します」
とのアナウンス。
新たな戦力の追加に沸き立つ彼女らの目の前に現れたのは・・・というもの。

これまでの『ローレライ1~5』まで、架空戦記小説作品に登場する艦船をモデルにした艦娘が登場してきました。

『時空改変空母・越後』より正規空母「越後」とか!

『龍神の艦隊』より大和型3隻とか!

字面だけ聞くとまともに強そうとか思うけど本文を読むと「なに…なにこれ…?」となる癖の強すぎる架空戦記艦ばかりが登場し、架空戦記小説のぶっ飛んだ世界観にツッコミをいれたり驚愕したり結局使い物にならねえ…というギャグを繰り広げるのがこの『ローレライ』シリーズです。……でした。

これまでと空気を変えてきた『ローレライ6 風雲マダガスカル

「…でした。」というのも、今回の『ローレライ6 風雲マダガスカル』は前回までのギャグベースに進む架空戦記小説コラボとは少し空気を変えて、真面目パートを全ページの8割に投入した構成になっているところが特筆すべきところ。

これまでは導入に真面目パートとしてマジメに強い架空戦記艦が登場するバトルを迫力たっぷりに描きつつ、そこからトンデモ架空戦記艦が登場するギャグパートへ崩れ落ちていく構成だったのですが、今回それが反転した形に。

そのボリューミーな真面目パートが今回とても印象深かったので、今回のエントリを書くに至ったと言っていいです。

ページを捲るたびに何処で盛大にギャグパートに崩れ落ちるんだろうと戦慄しながら読むと焦らされる感じでゾクゾクする…!

今作のテーマは「マジに強い架空戦記艦が本気で前線に大量投入されたらどうなる?」というIFのストーリー。

オーバーキル要員が次々と投入され、敵の深海棲艦側も架空戦記艦を投入しつつ激戦の末に人類が決断的に戦争を進めていく。奇想の限りを尽くした超兵器を使う艦や艦自体が超兵器的機動を行う艦などの存在が前線をガンガン押し上げていく。活躍していく。そんな中、元々の艦娘達はどう考え、どう生きるのか。

独自に艦これの設定を解釈しそれを更に佐藤大輔世界観的なトーンで練りあげて表現される、超常的な存在による異常な艦隊戦線。霧島によって明かされるこの「異常事態」についての種明かし。そして戦線の渦中にいる鳥海を始めとした面々の複雑な心持ち。

……考えるほどに闇が深くなる…!

そして霧島さんがなー。とってもエロい。…じゃなくて(エロいけど)
読んでてもうなんていうか複雑な感情が湧き出てきてつらい。自称「艦隊の頭脳」として霧島が選んだ自身の結末は…××××(ネタバレ)。
そうなんすよ霧島さん多分『艦これ』に出てくるキャラの誰よりも一番こういう選択しそうなんですよもー。

「……今回マジシリアスじゃないですか磨伸先生…!」

これまでのシリーズにはない空気感をまとい、
読者の前に降り立った『ローレライ6 風雲マダガスカル』なのでした。

…でもあんしん。後半のギャグパートではやっぱり「なにこれ…なに?」という架空戦記艦が登場するという…ね…!(膝をつく)

「艦」とは一体…うごごごご。

架空戦記の世界に飛び込むキッカケに

シリーズ全作通してなんですが、『ローレライ』シリーズの魅力を一言で表現すると
「知らなかったそんな世界……」
という感じになるかと。

これは作者である磨伸映一郎先生の作品全般に言えることでもありますが、豊富で幅広いジャンルに対する造詣の深さと、それを自身の作品として「笑える・面白い」に昇華出来る構成力の高さがこの作品の魅力。

読むことで読者の意識に様々な「知識の種」が植え付けられ、
それが興味となっていつかどこかで芽吹くときに、
読者は「知識を得る」ことの快楽を得る。

私も『ローレライ』シリーズを読んで初めて架空戦記小説というジャンルをちゃんと認識しましたし、それから『紺碧の艦隊』を読んでみたり、『紅の戦艦』を読んでみたりなど、少しずつ架空戦記の世界のことに興味が湧いてきてるところです。

今はこの同人誌からだけの知識なのでイマイチわからない顔をしていますが、いずれ架空戦記小説界の全体が見えてきた時に
「このシリーズはなんてマニアックなのを紹介してたんだ…」
と戦慄するであろうことも楽しみにしています。

次回は一体どうなるのか。
おそらくのサブタイトル「紅海雷撃作戦」が今から楽しみです。